最初におことわりいたしますと、私は“ご飯党”であってパンを食べるというのはどちらかというと珍しいことなのです。そんな人間がなぜパン屋さんの食べくらべなんていうことをしたのか・・・
どうでもよいけれど本人はいたって真面目。つきあわせれたメンバーは大いに迷惑。今回はそんな余談です。

手前から、ウチキパン・ポンパドウル・VIE DE FRANCE
横浜でパン屋さんが登場したのは万延元年(1860年)。「その翌年に横浜ベーカリーという欧風のパン屋がオープンされ現在のウチキパンへとうけつがれ・・・」というパン屋としては長い歴史をもつウチキパンが元町では対外的によくしられています。またポンパドウルも元町発のパン屋さんで、いまでは全国に店舗展開されています。けれど、JR石川町駅近くにVIE DE FRANCEがあり、こちらは全国にチェーン展開しているため知名度は抜群。ギャラリーSPACEⅢを運営していたころ、個展や企画展に出展していた作家さんたちはよくこのVIE DE FRANCEの青い袋をもっていらしたものです。
そんなとき私がよく言ったのは「今度くるときはウチキパンをのぞいてみたら?」ということ。ご飯党の私は、ウチキパンに特別肩入れすることもないですが、元町といえばウチキパンと思っていたのですね。VIE DE FRANCEだったらご自宅の近くにもあるでしょうと。
ところがギャラリーSPACEⅢを撤収するというまさに最後の日、オーナーから慰労をかねて昼食にパンを差し入れていただいたのです。店名は「昭和ベーカリー」。
代官坂ちかくに小さくて地味なパン屋さんがあることは知っていました。ただそれは視界にはいったことがあるというだけのこと。それもそのはず知る人ぞ知るという“隠れた名店”だったのです。
元町の地で80年パン屋をつづけてきたとのこと。今はご夫婦二人で一日に一度だけ焼き、11時ころに店をあけ13時から14時ころにはすべて売り切れておわり、というのがここのところのサイクルだそうです。「近所のお店の人たちが買いにきてくれるので」とにこやかに奥さんが話をしてくれました。
もっとはやくにこの昭和ベーカリーを知っていれば、ウチキパンだけではなくこちらも紹介できたのにと悔やまれた昨年末。そしてふと感じたのが工房暖簾という企画との類似性でした。
工房暖簾の目的は各地に点在する良質なものづくりやアート工房の発掘と発信。パン屋さんに例えれば、まさにこの昭和ベーカリーのような工房を探し紹介することなのです。もちろんウチキパンだって該当するのですが、探し出す面白みという点では昭和ベーカリーのほうが上かもしれません。
そんなわけでこの思いを伝えたいがためにメンバーたちの大切な昼食を犠牲にして、無理やりパンを食べてもらったという大真面目で大迷惑なお話でした。
味?どこもおいしいです。極端な差は感じられませんでした。ご飯党ですからね。ただ、もう飽きてきたなというところで最後に駄目押しした昭和ベーカリーの「カワハギパン」は特別においしかった。

昭和ベーカリーのカワハギパン